【ショートショート】小さな王様

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 あるところに、小さな王様がいました。小さな王様は、とても怒りっぽいことで有名でした。背丈は人々の腕にすっぽりおさまるくらい小さいのに、人々の5倍も10倍も、いえ、それ以上にいつも怒っていました。

 王様が怒る時は、顔を真っ赤にして怒ります。なんでわかってくれないんだ。お腹が空いたんだ。ここでご飯は食べたくない。洋服の着心地が悪い。ひとりにしないで。退屈した。眠たいのに眠れない。理由はわからないけどなんか嫌なんだ!

 朝、目覚めた瞬間から、もう王様は怒っています。お腹が空いたぞー!

 それまでにこにこしていたと思ったら、一瞬で怒り出す時もあります。王様は気分屋でした。そしてひどい時は、10分20分と怒り続けます。ただ、王様は話すのが苦手でした。ずーっと「あー!」とか「んー!」とか大声を出しながら地団駄を踏んだりして怒るのです。家来たちは、王様が何に怒っているのかわかりません。お腹が空いたのかな、眠いのかな、退屈したかな、トイレに行きたいのかな、何かな、どうしたんだろう、とああでもないこうでもないと言って王様が機嫌が良くなるように一つずつ試しました。

 王様はお腹が空きすぎてしまうと、食べ物を前にしても怒ります。怒りで我を忘れてしまって食べられないのです。口にスプーンを入れてもらっても、押しのけてわめきます。家来に宥めすかされて、ようやく食べる気になります。ガツガツガツガツ。ゴホッ、ゴホゴホ。こぉのー!また当たり散らします。むせたじゃないか!何か思い通りにいかなければ、全部家来のせいです。ははぁ、王様!ただいま!どんなに理不尽でも、王様は絶対なのです。

 王様は眠る時も手がかかります。疲れすぎるとベッドで王様は大騒ぎ。「眠いなら寝ればいいのに」。家来たちは皆一度はそう思いました。王様は顔を真っ赤にして怒ります。大丈夫ですよ、お歌を歌いましょうか。家来たちは王様を落ち着かせて、眠りにつけるように宥めます。

 王様は自由気ままに暮らしていたので、来客や出かける予定がある日は準備に大忙しでした。さあ出かけましょう、という時にお腹が空いた、と王様が言いだします。食事を出したら洋服を汚し、着替えたら今度はトイレ。気づけば出発の時間が過ぎていることもしょっちゅうでした。来客の途中に眠たいと怒ることもあります。お昼寝が必要なのです。それでも、お客さんや周りの人は皆、王様だから仕方がないね、と笑って許してくれました。怒りん坊の王様だけど、みんな甘やかしていました。

 どうしてそんな人に仕えるのかと思いますよね。私だったらそんな気分屋の怒りん坊の王様なんて、絶対仕えたくありません。でも王様には不思議な力がありました。王様が笑うと、人々もつられて笑ってしまうのです。どんなに怒っていても、王様の笑顔を見ると、しょうがないなあと思ってしまうのです。

 あ、王様がお昼寝から起きたみたい!おーい、おーい。はいはい。抱っこしましょうね。

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